1993年 プロイセン国立文化財団主催「山田光造展」によせて (全文)

このたび、石刻画 SEKKOKUGA 、磐業の作家としてユニークな立場に立つ山田光造さんの作品展が、国立ベルリン東洋美術館で開催されるという。わが国でも知られている立派な東洋美術のコレクションを持つ同館において、わが国の自然環境の根深いところから生れて来たような山田光造さんの芸業が紹介されることは、大へん意義の深いことと思っている。

同氏の仕事の内面性の深い意味を理解する人々が必ずやベルリンにおいても増えるであろうことを期待している。

この石刻画の意味について、かつて作者自身が次のように述べたことは周知である。

「石を媒体とし、その表面は隠肌から陽まで制作目的によって選び、それぞれの穏陽をさらに意思により凸凹を刻す。石の大小、さまざまに石の質は無数となり、それぞれ色をのせ和紙にくりかえし染める。筆を用いて図を描くように、必要に応じて石を律として画を造るので(刻を筆とする)当然一点のみしかその作品は出来ないし、一点のみしか必要でない。」

これは氏の芸業の特性をそのまま示唆しているが、いずれにせよ、石という宇宙エネルギーのシムボルでもある大自然の息づかいにそのまま即しながら、またその色、香、響を芸術的に伝えつつ、いわゆる天地玄黄の広大深遠の風趣を目指しているところが焦点である。その芸業は、いまや20世紀の近代が終ろうとしている今日、ともすれば、見失いがちであった地球の大切な何ものかを、改めて憶い出させるかのようでもある。

この展覧会が、来るべき世紀の重要な課題を触発する機縁となることを願いながら、ベルリン展の盛会を祈らずにはいられない。

河北倫明
財団法人横浜市美術振興財団理事長
美術評論家連盟会長

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